休業期間の運用型広告はユーザー目線で計画しよう
広告主としては休業期間でも、広告を見るユーザーの広告に対する反応は変わりません。広告に興味を持てばクリックしますし、興味がなければ無視します。なので、興味を持つユーザーが減るなら使用される広告費は自然に減ります。一方で、休業期間でも興味を持つユーザーが減らないなら広告費も変わりません。もし、休業期間でもニーズや興味を持つユーザーが減らないのに、「休業期間だから」と意図的に配信を減らしてしまうと機会損失です。
したがって、休業期間の広告配信についてはユーザー側の視点で計画しましょう。広告主にとっては休業期間でもユーザーが興味を持つならしっかりと配信をすべきですし、ユーザーが興味を持たなくなるなら配信は停めるべきです。「休業期間だから弱めに」のような具体性のない曖昧なやり方は辞めましょう。
休業期間の広告計画は広告クリック後の変化に着目しよう
休業期間にユーザーの行動や反応が変わるとしたら、それは広告クリック後の行動です。具体的にはコンバージョン率の低下や、コンバージョン後の歩留まりの低下などです。場合分けして考えてみます。
年中無休の場合
世間が年末年始・お盆やゴールデンウィーク・シルバーウィークだったとしても、年中無休で平常時と変わらずにビジネスを継続する広告主については、広告配信に特別な調整をする必要はありません。通常通り、配信結果を見ながら調整しましょう。
コンバージョン率に影響が予想される場合
単一商品のオンライン販売で、決済までオンラインで完結するが発送が広告主の休業明けになる場合などは、コンバージョン率が低下する可能性があります。この場合は、過去の休業期間を参考にして休業期間中のコンバージョン率を予想し、そのコンバージョン率でコンバージョン単価を維持できるクリック単価になるように入札単価を調整しましょう。Google 広告でスマート自動入札を利用している場合は、季節性の調整を利用すると良いでしょう。合わせて、休業期間によるコンバージョン率の低下を相殺するようにコンバージョン率が高いセグメントにターゲティングを絞るのも有効です。
コンバージョン後の歩留まりに影響が予想される場合
BtoBのリード獲得を目的とした広告などでは、リードに対して反響営業をするまでの時間が開くことで歩留まりが低下する可能性があります。この場合は、過去の休業期間を参考にして歩留まりの低下幅を予想し、歩留まりの低下幅に合わせてリードのコンバージョン単価の目標値を見直しましょう。同時にコンバージョン率の低下も予想される場合は、その分も見越して入札単価を調整したり、コンバージョン率が高いセグメントにターゲティングを限定したり、季節性の調整を設定したりすると良いでしょう。
調整の結果として使用される広告費が減るのが理想
漠然と「休業期間の広告運用は」と考えると難しそうですが、課題を細分化して具体的に数値を当てはめて検討すればシンプルに考えられます。上記のように、休業期間によるコンバージョン率や歩留まりの低下に対応して入札単価やターゲティングを調整した結果として、使用される広告費が減る状態が休業期間の広告運用の理想的な姿となります。このように具体的に検討できれば「年末年始だから弱めに」などの曖昧な考えが出てくる余地はないでしょう。
非現実的なら広告の配信は停止すべき
休業期間のコンバージョン率や歩留まりの低下に合わせて調整をしようとしたら、クリック単価を平常時の1/10にしなければならなかったり、一番コンバージョン率が高いセグメントにターゲティングを限定してもまだコンバージョン率が足りなかったりする場合は、根本的に無理がある状態なので広告の配信を停止すべきです。
配信停止の是非は便益分析で判断しよう
休業期間の配信停止に対する懸念として「学習がリセットされてしまわないか」、「再開後に安定するのに時間が掛かるのではないか」の2点がよく挙げられます。「学習がリセットされる」、「再開後に安定するのに時間が掛かる」と漠然とした状態で扱おうとすると、よくわからないまま曖昧に議論が発散し、「うっすら配信を続ける」などの意味不明な結論になりがちです。数値化して金額で便益分析をすれば合理的に意思決定ができます。
ここでは、下のような場合について検討してみます。

休業期間については、どんなに入札とターゲティングを絞ってコンバージョン単価を下げても、歩留まりの低下によって広告経由の獲得は赤字になってしまうケースを考えてみます。この場合、休業期間は広告を停止すべきです。
ところが、広告の停止によって学習がリセットされたり、再開後に安定するのに時間が掛かったりすることで、再開後の利益が減ってしまうとします。この場合、休業期間も広告を出し続けた方がトータルの利益が大きくなるのであれば、休業期間に赤字で広告を出し続けた方が有利な可能性があります。
具体的に検討してみましょう。広告を停止したために起きる変化が「配信ボリュームが半減する」か「コンバージョン単価が倍になる」かのいずれかだった場合を考えます。

休業期間が10日間の場合、休業期間の利益はマイナス10万円です。配信を継続した場合は休業期間が明けた初日から1日の利益が通常時と同じ2.5万円なのに対して、配信を停止した場合は学習のリセットによりコンバージョン数が減少して1日の利益が半分になるとします。この場合、配信停止による影響が8日以内に解消されるなら広告を停止したほうがトータルの利益が大きく、影響が9日以上継続するなら広告を停止しないほうが利益が大きくなります。

「学習がリセットされるかも」、「再開後に安定するのに時間が掛かるかも」と、漠然とした不安を漠然としたまま扱おうとすると分からなくなってしまいますが、数値化して便益を計算すれば一目瞭然となります。お手元で数値や期間を色々と変えてみて、停止する場合としない場合のどちらのほうが利益が大きいかを検討してみましょう。ボリュームの減少やコンバージョン単価の上昇の程度を変えてみて、損益が逆転する日数の変化を検討することで、プラスとマイナスのどちらの可能性が高そうかがわかります。
ところで、休業期間中のコンバージョン率の変化や歩留まりについては過去の休業期間の分析でわかります。配信を停止した場合の再学習に必要な期間について、Google は「コンバージョンサイクル1~2周」と説明しています。なので、すでに手元に必要な情報は揃っていて手持ちの情報で分析できます。特別に新しいデータ取得などをする必要はありません。
ここで重要なのは、最初から完璧を目指さずないことです。数値はアテでいいのでまずはやってみるましょう。ふりかえりをして数値を見直すことで精度は上がっていきますから、まずは始めることです。
媒体担当者や運用代理店の不安を煽る発言は無視しよう
ここまで説明してきた通り、休業期間に広告の配信を続けるべきか否かは数値による便益分析で合理的に判断できます。「学習がリセットされるかも」、「再開後に安定するのに時間が掛かるかも」と曖昧な物言いで漠然と不安にさせて少しでも多くの広告費を使わせようとする広告媒体担当者や運用代理店の発言は聞く必要ありません。貴社のために合理的に検討をした上で発言しているのなら具体的な数値で示せます。曖昧な表現で漠然と不安にさせている時点で、なにか意図があるかそもそも具体的な検討をしていないか、どちらかです。
ちなみに、本当に学習のリセットを防ぐだけの目的で広告を配信し続けた方が利益がでることは稀です。停止期間を学習期間からデータ除外するなど、回復を早める手段もありますから、「停めずに赤字で広告を続けたほうが利益が増える」ことはほとんどありません。
