コンバージョンの計測数は重複する
あるユーザーが下図のような行動を経てコンバージョンを達成したとします。

検索広告Aでウェブサイトを初めて訪問し離脱、ディスプレイ広告Bで再訪し離脱、SNS広告Cで再訪してコンバージョンを達成した場合を考えます。この場合、実際に獲得できているコンバージョンは1件です。しかし、広告レポートでは、全ての広告媒体がそれぞれ1件ずつのコンバージョンを計上します。したがって、合算した広告レポートのコンバージョン数は合計3件になり、実際よりも多くのコンバージョンが計上されてしまいます。
コンバージョン単価の達成は広告レポート上だけの可能性がある
検索広告A、ディスプレイ広告B、SNS広告Cの1日の広告費がそれぞれ、検索広告A:3,000円、ディスプレイ広告B:4,000円、SNS広告C:6,000円で、この日にコンバージョンを達成したのは先程の例のユーザーだけだった場合、この日の広告レポートは下図のようになります。

コンバージョン単価の目標値が 4,000円の場合を考えます。検索広告Aとディスプレイ広告Bは目標値を単独でクリアしています。SNS広告Cは単独ではクリアできていませんが、広告全体でみればクリアできています。
ところで、広告レポートのコンバージョン数は合計3件ですが、実際に獲得できているコンバージョンは1件です。なので実際の獲得単価は 12,000円になり、目標を大きく超えてしまっています。
このように、ひとりのユーザーがコンバージョンを達成するまでの間に複数媒体の広告に接触する場合は、広告レポートのコンバージョン単価が目標内であっても、実際の獲得単価は目標を超えている可能性があります。
ひとつの広告媒体しか使っていなくても広告レポートは信用できない
広告媒体をひとつしか利用していなくても広告レポートでは費用対効果を正しく把握できません。
あるユーザーが下図のような経路でコンバージョンに至ったとします。

このユーザーはオーガニック検索で初めてウェブサイトを訪れて離脱し、検索広告で再訪問して再び離脱しています。その後、SNSのオーガニック投稿で再訪問してコンバージョンに至っています。検索広告は最初の訪問でも、コンバージョンを達成したセッションのチャネルでもないため、貢献度は小さそうです。しかしながら、広告レポートではこのような場合でも丸々1件を計上しますので過大評価です。
広告による増加分の費用対効果を考えよう
例えば、オーガニックトラフィックで1か月に 100件のコンバージョンを獲得できているウェブサイトに対して 20万円分の広告をしたところ、1か月で 50件のコンバージョンが広告レポートに計上されたとします。このとき、「4,000円のコンバージョン単価で 50件のコンバージョンを増やせた」と評価できるのでしょうか。
答えは 否 です。
広告レポートでは、オーガニックでの接触の貢献度を無視してすべて広告の成果としてしまうため、広告で計上されるコンバージョン数は実際の貢献度よりも多い可能性があります。もし、広告がなかりせば獲得できなかった件数の割合が40%だったなら、ウェブサイト全体で獲得できたコンバージョンは 120件です。つまり、広告によって増えたコンバージョンは20件で、その獲得単価は 10,000円になります。

ウェブサイトでの販売全体の営業利益も見よう
次に会計的に営業利益を考えてみましょう。下の図は損益計算書の一部です。ある商品の販売価格が 12,000円で、原価が 7,000円、広告費以外の販管費が 1,000円だった場合を考えます。 このケースでは1個の販売に 4,000円以上の広告費(≒コンバージョン単価)を掛けてしまうと営業利益がマイナスになってしまいます。

次に使用する広告費の金額ごとに見てみます。少々極端ではありますが、広告のコンバージョンがオーガニックと重複している状態で広告費を増やしたらどうなるかを分かりやすくするために、次のような設定で検討します。広告レポートのコンバージョン単価は 4,000円とし、広告がなかりせば獲得できなかった件数は広告レポートのコンバージョン数の 40%とします。

広告がなかりせば獲得できなかったコンバージョンは 40%しかない状況では、広告レポートのコンバージョン単価は目標内の 4,000円でも、増加分の獲得単価は 10,000円です。広告費の増加よりも販管費の増加の方が大きく、営業利益が減ってしまいます。このケースではひとつの広告媒体で考えましたが、複数の広告媒体を利用すると広告媒体同士の重複も生じるので、広告レポートのコンバージョン単価と増加分の獲得単価の差はより大きくなります。
したがって、広告の実施でどれだけのコンバージョンを増やせているのか(≒貢献度)を把握して費用対効果を評価することがとても重要です。
解決策:GA4で貢献度を見て広告の費用対効果を評価する
ここまでは、広告レポートのコンバージョン単価が目標内でも営業利益がマイナスになってしまう可能性とその理由を見てきました。GA4を利用して各広告媒体の貢献度を評価して費用対効果を把握すればこのような問題は起こりません。
下の図はあるユーザーが自然検索、検索広告A、ディスプレイ広告B、SNS広告Cを経てコンバージョンを達成した場合の、広告レポートとGA4のデータドリブンアトリビューションで割り当てられる貢献度の例です。

GA4のデータドリブンアトリビューションでは、ウェブサイト上で発生したキーイベントを関わったチャネルにその貢献度に応じて分配するため、広告媒体の計測によって生じる重複やオーガニック チャネルの貢献度の不算入による広告の過大評価が起こりません。したがって、GA4のデータドリブンアトリビューションで分配されたキーイベント数は「その広告なかりせば獲得できなかったコンバージョンの件数」に近くなり、かなり正確に広告の費用対効果を評価できます。
GA4の貢献度が割り当てられるチャネルの設定
(キーイベントの設定は終わっているものとします。)
まずは、キーイベントの貢献度の割当方法であるアトリビューション モデルが [データドリブン] になっていることを確認してください。なお、デフォルトはデータドリブンなので、意図的に変更していない限りはデータドリブンになっているはずです。アトリビューション モデルの設定は、[管理 > データの表示 > イベント > アトリビューション設定] と進んだ画面でします。ここで [データドリブン] が選択されてることを確認してください。


GA4で貢献度を確認する方法
いよいよ本題です。データドリブンで割り当てられた貢献度は、[広告 > アトリビューション > アトリビューション モデル] と進んだ画面で確認できます。もし、キーイベントとして広告のコンバージョン地点以外のイベントも計測している場合は、広告のコンバージョン地点と同じキーイベントだけを選択してください。ディメンションを [参照元 / メディア] にして [データドリブン] の列を見れば、各広告媒体の貢献度を確認できます。

単純に各媒体の数値を合計したレポートは今すぐ廃止せよ
下の図のように、全広告媒体の数字を単純に合計したレポートをよく目にしますが、このようなレポートを使うのはすぐに辞めることをおすすめします。広告媒体同士の重複やオーガニックの貢献度の不算入により、実際よりもコンバージョン単価が低く算出されています。したがって、このレポートで広告の費用対効果を判断したのでは広告を過大評価しかねません。レポート上のコンバージョン単価は目標内なのに広告をすればするだけ営業利益が減る可能性があります。

ただ、貢献度による広告の費用対効果の把握にも注意点があります。多くの場合、コンバージョン1件ごとに採算を合わせようとすると、広告管理画面上のコンバージョン単価をかなり下げなければならず、広告配信が破綻するおそれがあります。したがって、LTVを把握して「新規顧客の獲得単価」をKPIにするなど、数値計画からの見直しをおすすめします。
